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p329 宇田雄一「古典物理学」
このページの上端へ行く ホーム 前のページ 次のページ 宇田雄一について
【SEOテキスト】宇田雄一「古典物理学」数学の基礎付けの問題から、物理学を全く排除してしまうことが出来ないという認識に立って、数学プラス物理学の基礎付けの問題を解決して行く学問分野として、物理論理学というものの成立する余地があると私は思う。論理学の構造(文法)が人間の置かれている物理的状況の特殊性を如何に反映しているかという問題や、擬日常化の詳細を明らかにすることが、物理論理学の一つの中心問題となろう。最後に、実歴史の中で実況直面的に措定される言語によって、実歴史以外の歴史(可能ですらない歴史までも)が言い表され得るのは何故か、という問題を考えてみよう。「箸を持つ」「茶碗を持つ」「コップが割れる」「花瓶が割れる」という文を実況直面的に学習した後では、幼児は「コップを持つ」という文の意味を実況直面的な学習なしに理解できる。これが実況直面的に措定された言語が実況を超える仕組みなのではないか。その本質は、適用範囲を超えて言語を応用することにある。例えば、「ウィンドウズのアイコンをクリックする」と言う時には、「クリックする」という語が適用範囲を超えて応用されている。本来は、「カーソルをアイコンに重ねた状態で、マウスのボタンをクリックする」と言わねばならないはずだ。しかし、「アイコンをクリックする」で通じてしまう。「箸を持つ」「茶碗を持つ」「コップが割れる」「花瓶が割れる」という文のみを実況直面的に学習した幼児が「コップを持つ」という文を作ることは、「アイコンをクリックする」という文を作るのに似た発明だと言える。実歴史の中で実況直面的に措定された言語を、適用範囲を超えた所まで応用することによって、実歴史でない歴史を言い表す文が出来てしまうのではないか。漢字の辺と造りを勝手に組み替えると、存在しない漢字が出来得るのに似ている。言語の適用範囲を超えた応用は、語の組み替えだけではない。「花瓶が割れる」という文を、学習したときとは別の機会に用いることも、適用範囲を超えた応用と見なせる。「花瓶が割れる」という文を実況直面的に用いるとは、厳密には一回性の歴史的事実を指して「花瓶が割れる」という言葉を使うという事だ。「サラエボ事件」という語を実況直面的に学んだ幼児が、しばらくの間、全ての殺人事件を「サラエボ事件」と呼ぶように成ることはあり得る。このタイプの応用ないし発明は、固有名詞を普通名詞化して用いるのに似ている。「太郎は日本のアインシュタインだ」という言い方がこの類だ。この文においては「アインシュタイン」という固有名詞が、
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