【SEOテキスト】宇田雄一「古典物理学」4-5-5幾何学的立方格子系T5が正しい場合、二つの物理的立方格子系S,S'について、S'が必ずしも「Sで計って立方格子系」にはなっていないことや、「Sで計って直交・同時」と「S'で計って直交・同時」とが必ずしも一致しないことを§4-5-4で述べたが、これは物理的立方格子系の欠点だ。この不都合を避けるために幾何学的立方格子系というものを考えてみよう。まず、物理的立方格子系の中から静止したものを探し出す。静止した物理的立方格子系で計って立方格子系だと判定される時空座標系を幾何学的立方格子系と呼ぶことにする。二つの幾何学的立方格子系S,S'については必ず、S'が「Sで計って立方格子系」になっている。しかし、幾何学的立方格子系には二つの欠点がある。物理的立方格子系でないことは、それ自体が幾何学的立方格子系の一つの欠点だ。日常語としての「直交」や「同時」は、物理的確認手段によって担保されるものだから、この欠点は、日常語の「直交」や「同時」が幾何学的立方格子系で計っての「直交」や「同時」と食い違う事を意味する。もう一つの欠点は、静止した立方格子系とは何かがはっきりしないことだ。これについては既に§4-5-2の末尾で、相対君と絶対君の対話として述べた。静止した立方格子系が分からなければ幾何学的立方格子系は定義できない。このように、物理的立方格子系にも幾何学的立方格子系にも一長一短ある。物理的立方格子系と幾何学的立方格子系とどちらが正しい立方格子系なのか。T4が正しい場合には、物理的立方格子系は全て互いに他に対して静止しているので、これらを静止した物理的立方格子系と見なして、幾何学的立方格子系を定義できる。幾何学的立方格子系の第二の欠点は生じない。しかし、動いている幾何学的立方格子系が物理的立方格子系にならないという第一の欠点は残る。T2が正しければ、物理的立方格子系どうしは必ずしも互いに他に対して静止しているとは限らぬが、どの物理的立方格子系を静止していると見なしても、幾何学的立方格子系は全て物理的立方格子系となる。T2やT4が正しい場合には、二つの物理的立方格子系S,S'について、S'が必ず「Sで計って立方格子系」になっているし、「Sで計って直交・同時」と「S'で計って直交・同時」とは一致する。だか
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