【SEOテキスト】宇田雄一「古典物理学」相対性原理に抵触しない何らかの理論からT4を導き出すという事に他ならない。エーテルはアンチ相対性原理の象徴ではなく、人間の思考が、放っておいてもひとりでに、相対性原理の方に向かって進んで行くことの証跡なのだ。エーテル理論と特殊相対性理論の違いは、電磁気学を力学に合わせるのか、力学を電磁気学に合わせるのかの違いであって、どちらも相対性原理を擁護する点では共通している。特殊相対性原理,意外な形で、相対性原理は生き残る。実験上の根拠に基づきエーテル理論は棄却され、ガリレイの相対性原理の代わりに特殊相対性原理が採用され、T4ではなくT5が正しいとされる。(S・lor(v),U・col(v))と(S,U)とは物理的に同等だ、とするのが特殊相対性原理だ。T5(P1,・・・,Pn;S,U,I,J)におけるLと、T5(P1,・・・,Pn;S,U,I,J;lor(v),col(v))におけるLとが等しいことをもって、T5は特殊相対性原理に抵触しないと見なす。ガリレイの相対性原理も特殊相対性原理も、詳細においては異なっているが、物理的に同等な二つの時空座標系が線形変換によって関係付けられる、とする点においては共通している。したがって、一つの質点P1しか実在しない場合にも、P1の等速直線運動の部分相互間の相対的関係と、P1の加速運動の部分相互間の相対的関係とは異なる、とされることになる。P1以外に質点が実在しなければ、質点どうしの相対的関係というものを考えようがないので、P1のすべての運動は同一の歴史に当たると考えるのが、相対性原理の本意なのではないか。マッハは、この観点からガリレイの相対性原理を不完全なものと見なし、マッハの原理を提案した。しかし、P1の運動を時間的経過にしたがっていくつかの部分に分け、それらの相対的関係というものを考えることが出来るので、ガリレイの相対性原理や特殊相対性原理を、相対性原理としては不完全であると先験的に断定するわけには行かない。
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