【SEOテキスト】宇田雄一「古典物理学」文字式を使わねば書き表せない文のもう一つの例として、「文字式x2<1の空欄xに何か実数を代入したときに、それによって出来上がった式が真命題を表す、そんな実数が少なくとも一つは存在する」こういった文を考えることが出来る。完成された文だけで書こうとすると、12<1が真であるor
02<1が真であるor (0.5)2<1が真であるor √32<1が真であるor・・・・・あっ!出来ない。いくら書いてもきりがない。しらじらしい感じがするではないか。件の文を∃x:実数;x2<1と書くことがある。「x2<1を満たす実数xが存在する」と読む。これもまた、論理式だ。∃x,y:実数;xy=x+yや∃x:実数;∃y:実数;xy=x+yについては、∀についてと同様だ。∀と∃を組み合わせると少し難しくなるので、説明しておく。例えば、∀x:実数;∃y:実数;x=2y,∃y:実数;∀x:実数;x=2yという二つの文を考えてみよう。くどいようだが、前者は、文字式∃y:実数;x=2yの空欄xにどんな実数を代入しても、それによって出来上がった文が真命題を表すことを意味する。それに対して後者は、文字式∀x:実数;x=2yの空欄yに何か実数を代入すると、それによって出来上がった文が真命題を表す、そんな実数が少なくとも一つは存在する、という意味だ。前者は真だが後者は偽だ。このように、∀と∃を組み合わせた場合には、順序によって意味が変わってくる。定義から明らかなことだが、∀x:実数;∃y:実数;x=2yを∀y:実数;∃x:実数;y=2xと書いたり、∀α:実数;∃β:実数;α=2βと書いても意味は変わらない。これらもまた論理式と呼ばれる。本書では定義などで、「Fを関数とするとき、・・・」といったタイプの文を用いることがあるが、これは「∀F:関数;・・・」という意味だ。「任意の関数Fに対して、・・・」という風に書く場合もあるだろう。厳密には、こういう場合のFは、関数ではなくて空欄を表すのだったが、慣用表現なので許していただきたい。「∀F:関数;」に当たる但し書きを全く省略する場合もある。 |